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京都賞シンポジウム②

思想・倫理分野は「地球の詩学-風土学的考察」というテーマで仏国のオーギュスタン・ベルク氏の講演で始まった。日本語による講演なので、同時通訳を聴くためのレシーバーを外すことができた。そういえば日文研も含めて17年以上、日本におられたのである。

氏は西洋(主語の論理)と東洋(特に日本の述語の論理)のそれぞれ思考法のよさや限界を踏まえながら、その高次の統合によって人間も含む生物と自然の新しい関係を追究されている。そして、氏の日本研究の原点であるとされる和辻哲郎の「風土」を援用しながら「通態」という独自の概念によって、自然と文化の二項対立を基調とする近代のパラダイムを超えようとする。

「通態」とは気候の在り方・自然の特性・地理的条件などと歴史的・社会的・文化的文脈との相互関係性の中で、そのつど可逆的往来によって生成される生きられた場といえようか。これまでに読んだ氏の著書は「日本の風景・西洋の景観」(講談社現代新書1990)。ちょうど樋口忠彦氏の「日本の景観-ふるさとの原型」(ちくま学芸文庫1993)の関連図書として読んでいたようである。

2人目は、木村敏氏。これまでに読んだ氏の著書は「時間と自己」(中公新書1982)だけだが、哲学書など様々な書籍で引用されている文章を目にしてきた。今回のテーマは「統合失調症における自己の障碍」。統合失調症は以前には「精神分裂症」を呼ばれていた。

この統合失調症を、木村氏は自己の個別的自己の成立にかかわる問題としてとらえている。通常、人は統一的で連続的なものとして自己をとらえている。その自明性が失われ自己の存在そのものの危機がこの病の根底にあり、患者が示す様々な症状とはその危機的な事態に対する能動的な応答とする。見方を変えれば、この病は自己の存在の不確実性や無根拠性、仮構性への心の奥底での気づきによる日常性からの「転落」であり、「覚醒」である。

「西欧社会における個の主体性の優勢が「主語」という文法形式を生んだ。それに伴って「能動態」と「受動態」の両様態が確立したと考えられる。(中略)これに対して日本語は主語が不在で中動態が汎用されている。何かの事態が生起したとき、(中略)それを引き起こす動作主は、その事態の主語としてではなく、事態の場所として表示される。」(配付されたレジュメ引用)

もと地理学者であったオーギュスタン・ベルク氏と精神医学の木村敏氏。驚くべきことに追究されている主題は互いに重なり合っている。

3人目は、シンガポール国立大学のアラステア・キャンベル氏。テーマは「医学と科学の核心にあるものとしての倫理」。

ノルバティス社の降圧剤データ操作問題に代表される実験データのねつ造や臓器売買などの不正が世界的に横行している。その現状(市場原理や競争原理、特権的な一部の人々の金儲け主義)を氏は告発する。つまり科学の論理であり価値観は本来人類への貢献であるが、それが、今や経済成長と収益性が優先され医学を含む科学全般において重大な危機的状況にあるとする。

人々の命を守り健康を維持増進させることを第一とする倫理観・価値観の再確立による正義の達成を氏は強く訴える。しかし、ことが構造的であり、世界的潮流であるが故に困難な道に違いない。
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京都賞シンポジウム①

7月12日(土)は京都大学と稲盛財団の合同京都賞シンポジウム「人類の叡智の最前線~生命科学、思想・倫理、情報科学の共振~」参加した。京都賞が今年で30年を迎える。それを記念して合同のシンポジウムが京都大学百周年時計記念館で開かれた。会期は13日(日)と合わせ2日間である。私の都合により、残念ながら1日のみの参加となった。

京大時計台

初日は各分野のフロンティアを代表する研究者9人の講演である。

生命科学分野では、まず生物を個体としてかたちづくるための重要な細胞接着研究の創始者である竹市雅俊氏から、細胞からそれぞれの組織が形成される仕組みについて電子顕微鏡写真・略図・アニメーションなどを駆使して研究成果の説明を受けた。極めて精緻なメカニズムによって生体が成り立っていることを改めて考えさせられた。

2人目は、米国のロナルド・エヴァンス氏。講演は「自らの肥満を解消したいと思っている方は挙手を!」から始まった。今日の世界的流行病とされる肥満(肥満はすでに病気である)・糖尿病・心血管疾患患者の増大をどうとらえ、どう解消するか。摂食することの重要性はもちろんのこと、運動不足をどのようにして補うのか。博士は、筋肉での糖や脂肪の燃焼が促進されるような遺伝子発現プログラムが動き出し、実際に運動したと同じような効果のあるエクササイズピル(運動模倣薬)を開発された。運動能力増強剤として違法に使用される恐れはあるが、運動しようとしてもできない車椅子生活者や身体虚弱者、病的な肥満者には朗報である。

3人目は、米国のロバート・ワインバーグ氏。癌研究についての世界的権威である博士の今回の講演内容は癌研究の中でもとりわけ癌の転移についての研究報告である。癌細胞の中でも「癌幹細胞」と言われる悪性度の高い癌細胞が転移を誘発するとし、その癌幹細胞のどのように消滅させるかについて熱弁を振るわれた。
プロフィール

ryoichi25r

Author:ryoichi25r

細谷 僚一 hosotani ryoichi
■ 大阪府箕面市生まれ(1948)
■ 京都教育大学教育専攻科美術工芸修了
■ 京都市立中学校教諭(美術科)16年
■ 京都市教育委員会学校指導課指導主事7年
■ 京都市立中学校教頭2年
■ 京都市教育委員会教職員課 人事主事5年
■ 京都市中学校校長5年(定年退職)
□ 大谷大学 教職支援センター教職アドバイザー4年(終)・非常勤講師3年(終)
□ 立命館大学 非常勤講師5年
□ 京都嵯峨芸術大学 教授3年
□ 京都女子大学 非常勤講師1年


履歴が示すように、専門は学校教育と美術科教育です。もともと好奇心旺盛なたちなので、様々なことに関心があります。学校教育にしても美術科教育にしても他のジャンルとのかかわりや歴史的観点から俯瞰的にみていくつもりです。

「美術科教育の未来」
2050年あたりに照準(大風呂敷)をあて、改善の姿を描こうと思っています。

「私の本棚」
読んだ本のまとめや感想をできるだけコンパクトにして整理したいと考えています。最も工夫したいことはそれぞれの本の関連づけです。

「気づ記・思いつ記」
日々の生活の中で気づいたことや思いついたことなどを日記のように表したいと思っています。


 

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